表紙裏で、プロットを把握した時点で負けました(笑)
「中世に人知れず果たされたファースト・コンタクト」
ファースト・コンタクトものでありながら、舞台が過去!
この設定は..読みたくなるでしょそれは。
実際に読むと予想以上に過去パートがメインな展開なのですが..(しかし最後の最後は現代班が非常に盛り上げます)
なんというか中世(14世紀)ヨーロッパ(主にドイツ)の描写が半端なく濃い(笑)
これでSFなのか?歴史小説じゃん!な密度です。
そもそもがこの作品において生じた/描写された事件の殆どは、「実際に文書化された資料として現存する(=史実である)」という事実の面白さ!/その資料を料理しきった作者の作りの見事さよ。
あとがきにもあるように、当時の自然科学(思索/哲学?演繹的思考?)の発展の度合いは現代人がなんとなーく思っている(であろう)それよりも遥かに高等であった!という視点も、刺激的です。
確かに..当時の哲学者の発想などは(基本的な前提や科学レベルの無知こそあれ)こと思索のレベルについていえば、今触れても新鮮だったりするし..
単純に時を経て人間の総体が頭よくなったというより..思考の在り方について言えば大して人間は進歩していない、のかもしれませんね。
その時と場所で始まる、異星人との交流も..
読前に予想されたように穏やかーで真心溢れる展開には到底ならず!その時代性や異星人故の価値観のズレもひっくるめ、見事に誤解と試行錯誤の繰り返しとなる。その過程もまた実に、綺麗事に逃げずにリアル。
そして主人公が聖職者であることから、物語には当時の時代背景のみならず宗教観も色濃く反映され、ついには異星人の中にも..
とにかく全体に抑えた!暗ぁいトーンなのですが、それが読み進めるごとにじわじわと登場人物たちへの共感に繋がり、そして。
…こういう終わり方になるのか、といろいろな意味で驚愕しましたが、その作りが実に!上手い。