風が強く吹いている

日本人であれば誰もが目にしたことのある、お正月の風物詩とも言えるスポーツ『箱根駅伝』。
三浦しをん著『風が強く吹いている』は、そんな箱根駅伝の舞台にたった10人のメンバーで挑み、走ることを通してそれぞれが成長していく様を描いた青春小説です。
物語は、主人公の走(かける)が大学に入学し、ボロアパートに住む9人の住人たちと出会うところから始まります。
走は走ることを愛し、そして走ることに恵まれた、まさに天才ランナー。
その一方で過去の痛みや家族との確執を抱え、常に苦しみの中を走り続ける孤独なランナーです。
アパートの住人たちは、皆それぞれ何かしらの痛みや想いを抱えています。
だけど、側から見れば「普通の」どこにでも居る大学生たち。
この物語の魅力は、登場人物が皆「普通」であることです。みんなで酒を酌み交わし、恋の話や就活や禁煙や、あたりまえの日常が流れている。
そこに「たった10人で箱根駅伝に挑む」という非日常がプラスされた時、頭では「そんなことありえない」とわかっていても、何故だかそれをすんなりと受け入れてしまう自分が居るのです。
物語の後半、箱根駅伝本番の章では、一区から十区までのランナーのモノローグが襷を繋ぐようにリレーされます。
それぞれの想いや、そこで初めて明かされる真実や、他の住人との絆。
ページを捲るごとに、涙が込み上げました。
そして全て読み終わった時には、10人の選手たちと共に完走したような達成感で胸がいっぱいになりました。
お正月にテレビで箱根駅伝を観るたびに読み返したくなる、大切な小説です。