インターネットの出会い系サイトで知り合った中学の女教師(吉田希美子)と公務員(片原盈)の男がエスカレートしていく話です。
性描写は、やはり男の作家だなと思うところが多分にあります。
しかし、吉田希美子の思春期から大人になるまでの過程での女性としての心理描写やこういうことをするようになって仕事で何かあってもあまり落ち込まなくなったとか、エリートとそうでない人たちが体験する両方を自分は体験できているといったような奇妙な優越感など吉田希美子の女性心理を巧みに描写してあり、男性でも繊細で人間観察力が鋭い人は、平野さんに限らず、こんなにまで女性を深く観察し、想像をめぐらせているのかとゾクッとしました。平野さんは一人っ子で女の兄弟もいないのにすごいなと思いました。
片原盈に関しては、こんな男性はいそうだなという気はしますが、女性の立場から考えると自分のキャリアを棒に振ってまでこんな優しくも美しもない男性との性行為にのめりこむ人はいないと思います。
2008年の作品ですが、私は今年読んで、10年前にこんなにもうネット社会だったかなと考えさせられました。
彼の他の作品で読んだことがあるのは「空白を満たしなさい」ですが、夫婦愛などその人たちがよければそれでいいんじゃないみたいな本より後味は悪いけれど引き込まれて読んみました。
三島由紀夫の再来といわれる彼の第120回芥川賞を当時最年少の23歳で受賞した「」日蝕」やこの度映画化される「マチネの終わりに」も読んでみたいです。