安曇潤平著の『山の霊異記 幻惑の尾根』。
山登りは危険が伴う場所と言えます。
けれど、山での危険は霊的なものにまで及びます。本書はそういった物語が20話あります。
数々の山々に登った著者が訊き集めた山岳怪談なのです。実話なのです。
そう思っただけでも背筋がゾクゾクとしてしまいます。
山で恐怖体験をしたら、どうしたらいいのでしょうか。
まずは逃げるという選択肢があります。けれで、逃げ切れるのかはわかりません。
そんな不安が私の心に渦巻きました。
本書の話は、読者に先を想像させるようなところがあります。
果たして、この後どうなるのかと妄想を膨らませてしまいます。
本当に山登りをしているのではないかと思ってしまうくらい読んでいて惹き込まれてしまいます。
山々の景色が目の前に見えてくるようです。
そんな中、怪異が繰り広げられます。
惹き込まれるせいで、余計に恐怖が膨らむのでしょう。
山小屋のとある一室での怪異。近道のトンネルでの怪異。異臭がもたらす死へ導く怪異。
山に落ちていた赤い靴を拾ったがために降りかかってくる怪異などがあります。
山にはそこ場に関わる者の未練や怨みが漂っているのかもしれません。
暑い日に読めば、きっと涼しくなることでしょう。
背筋に悪寒が走ることでしょう。
けれど、この20話の中には心が温かくなるような怪異もあるのです。
身の毛もよだつような話ばかりではありません。
優しくほっこりするような話のほうが私個人的には好みではあります。
本書は、怖い話の中にほっこりするような話もあるので私はいいなと思います。
これが本当に実話なのかと思うと、いろいろと考えてしまう部分もありますが山登りをする上でそういう怪異もあるということを知っていることはいいことなのかもしれません。
ふとそう思えました。
私は山登りをしませんが、きっと山登りが好きな人にとっては霊的な体験をしたとしてもやめようとは思わないのでしょう。
確かに自然を堪能するには山は良い場所なのかもしれません。
怪異がなければ、少しは山を感じてみてもいいなと思えます。
どうせなら、ほっこりできるような霊体験にしてほしいです。
怖い話が好きな方は、山での怪異の話を読んでみてはいかがでしょうか。
読みやすいですから、あまり読書はしないという方でも怖い話は好きって方にはいいのかもしれません。