人気漫画シリーズ『金田一少年の事件簿』のノベライズ版で、作者は天城征丸さんです。
沖縄の孤島に造られたリゾート施設に招待された金田一一と七瀬美雪ですが、その施設が「キング・シーサー」を名乗る人物に率いられたテロリストに占拠され、さらに残虐な殺人事件がその施設で起こる、というストーリーです。
上下巻に分かれており、上巻ではサスペンス要素、下巻では殺人事件の鍵を解く推理要素が強くなっています。
『007』シリーズではありませんが、金田一少年と、その友人にして中国拳法の達人である楊小龍が協力してテロリストの手から逃れるシーンは読んでいて手に汗を握るシーンといえます。
そして、小説版では珍しいと言えるのが、シリーズ屈指の人気キャラクターである明智警視の活躍です。テロリストたちと戦う金田一少年らを、別の場所からサポートしていく姿はまさに彼らしいといえます。
また、テロリストたちはそれまで互いに面識がなく、インターネットのサイトを通じて知り合い、現実社会に対する不満を利用されて、徐々に「キング・シーサー」に洗脳されていくのですが、99年に書かれた作品とはいえ、現代社会に潜んでいる闇を描いているように感じられます。インターネットを介した集団が無差別にテロを行う、という恐ろしさはいつ起こってもおかしくないものです。
スペクタクルな展開にばかり目が行きがちですが、その中でも事件の謎を解く要素はさりげなく示されているので、そこにも注目です。かなり楽しめる娯楽作といえます。