全ての始まり「月の影 影の海」

本作は、十二国記シリーズの一作目です。

中華風の異世界を舞台にしたファンタジーですが、そこで生きる人々は、ヒリヒリするほどにリアル。

特に前半は辛い展開の連続で、正直読むのがしんどいほど。

でも中盤から最後にかけて、身震いするほどの興奮と、感動を与えてくれます。

主人公の中嶋陽子は、ごく普通の高校生。

ところがある日、突然現れたケイキと名乗る男に、見知らぬ場所へと連れ去られます。そこは次元を超えた、中華風の異世界。

ケイキは姿を消し、次々現れる怪物に襲われる陽子。

人々も異質な存在である陽子を敵視し、問答無用で殺そうとします。

追われ、悪意を向けられ、信じかけた相手に裏切られ……。

何も分からず、たった一人で、心身ともにボロボロになっていく陽子。

誰が、何の為に、自分をここへ連れてきたのか?

しかし重傷を負った陽子は、一匹の大きなネズミに助けられます。

言葉を喋る彼の名は、楽俊(らくしゅん)。彼の好意を信じられず、警戒を解けない陽子ですが……ある出来事から、少しずつ自分の心に向き合い始めます。

楽俊とはぐれた陽子は、保護してくれる雁(えん)国を目指して、一歩一歩旅をします。自分の力で道を切り開き、人と関わって……そして辿り着いた雁国で、待っていた楽俊と再会した陽子。初めて本心を曝け出して、二人は本当の友となります。

異邦人を拒絶しない雁国で、楽俊と楽しい時間を過ごしますが、そこで驚きの事実が判明し……。

世界でただ一人でも、自分を受け入れてくれる相手と会えた、嬉しさ。

人を信じられる自分でいられることの、嬉しさ。

内気だった陽子が、強くなっていく姿に胸が熱くなります。

最初は少女向け小説として出版された本作ですが、大人にこそ読んでほしい、骨太な物語です。