満腹亭(アナーキーなレストラン)へようこそ

筒井康隆さんの著作の中で、「食」に関する作品を集めたものです。人間にとって食べる、ということがどういうことであるのか考えさせられる内容にもなっています。

「薬菜飯店」という作品では、本当の薬膳として、食べていくたびに身体の悪いところが排出されていく、という料理が描かれています。悪いものが身体の外に出されていく様子はグロテスクさも伴いつつも、笑えます。その料理を食べていいものか、悪いものか、読んでいてちょっと迷うところがあります。

「蟹甲痒」では、特殊な蟹を食べ続けた結果として、蟹の甲羅状の皮膚疾患ができてしまい、しかもその中には蟹の味噌と同様の美味な物質が詰まっていた、という設定に驚かされます。その中身を自分で食べてみて美味を確認する、というのはやはりグロテスクに感じますが、同時にユーモアもあります。しかし、その原因とそれがもたらす影響がわかったときのブラックさは筒井作品らしい、といわざるを得ません。

「肥満考」は、肥満に悩む著名な女性作家の話です。断食を決行して痩せようとしても思うように効果が出ず、逆に食べるとそれ以上に太ってしまう姿、さらに自分のルックスが災いしての被害妄想に陥る姿は憐れみを誘います。

「定年食」は、食料が極端に不足した未来の一コマを描いたブラックな作品ですが、どこか日本の民話につながるようなところも感じます。

ブラックユーモアをたっぷりちりばめつつも、楽しんで読めるところは、筒井作品らしい味付けだと思わされます。