本作は、人気の「十二国記」シリーズの二作目です。
今回の主役は、載(たい)国の神獣・泰麟(タイキ)。
彼は日本で生まれ育った、幼い少年。
それが十の年、いきなり次元を超えて、十二国世界に連れていかれます。
彼は本当は、こちらの世界で生まれるべきだった神獣。
ですが、ずっと人として育った彼には戸惑うことばかり。
自分が人ではなく、麒麟という神獣であること。
天の意思を受けて、王を選ぶ役目があること。
普通の麒麟が出来るはずの、姿を変えることも、妖魔の部下を持つこともできません。
それでも目の前の現実を受け入れ、懸命に役目を果たすべく奮闘します。
彼を支えるのは、女仙たちや、同じ麒麟の景麒(ケイキ)など。
当然ながら、別れた故郷や家族が恋しくなることも……母親を想って、ひっそり泣く泰麒がいじらしいです。
そして汚れのない神獣だからこそ、日本で周りに溶け込めなかった点が、なんとも切ない。
素直で愛らしくて、でも気弱で、自分に自信が持てない泰麒。
読みながら、この子を幸せにしてあげたい……と思ってしまいます。
そして彼は、ある人物と出会います。彼=驍宗(ぎょうそう)を守る為、生まれて初めて、強大な妖魔と対峙する泰麒。
そこまでさせる驍宗は、天が選んだ王なのか?
そして、彼を守り通すことが出来るのか?
泰麒は終盤、驍宗の為に、とんでもない行動をとってしまいます。
ハラハラしつつ、健気な幼い少年の行動を、固唾を飲んで見守ってしまいます。