柴田錬三郎『由井正雪』を読んで

江戸時代の軍学者で、江戸幕府討幕を試みるも失敗し、自害した由井正雪の物語です。
ストーリーテラー柴田錬三郎の手によって実に面白く話が展開しており、一気に読めました。
この乱の失敗は正雪の運命と位置付けられています。
二人の人物がそれぞれ別々に正雪の本性を見抜いています。
その運命を呼び込んだのは宝蔵院流の槍の名人丸橋忠也でした。
彼の二度の失敗が、正雪の運命を現実のものにしてしまいました。
第一に、犬に吠えたてられたのに事寄せて、江戸城のお壕に石を投げ込み、水深を測定しているのを智恵伊豆こと、松平伊豆の守信綱に見られ調査の端緒を作ってしまいました。
第二に、嘘をついて大金を借りた弓師藤四郎に秘中の秘の連判状を見せ、無理矢理署名させ、仲間に入れてしまいました。
あまりのことにおびえた藤四郎は訴人として幕府に訴え出ます。
智恵伊豆の対応は実に素早く的確でした。
正雪は駿府にあって、不吉な流れ星を見て事が露見したことを悟ります。
由井正雪と丸橋忠也は言わば、光と影の存在であったのです。
光あるところには必ず影があります。
利口過ぎる正雪はそれなりの影を負わなくてはなりませんでした。
このようなことは、規模の大小はともかくとして、我々の人生にも意外に起きているのではないでしょうか。